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実験概要
製品とカタログ番号
アッセイフォーマット
データ分析
その他の情報
ヒント
GTP結合アッセイは、GPCR(G protein-coupled receptor; Gタンパク質共役受容体)の活性化を調べるために使用される方法です。このアッセイでは、GPCRを過剰発現させた細胞膜に対する非加水分解性GTPの結合を測定します。
また、細胞全体ではなく細胞膜を使用する必要があり、Gi共役受容体で最もよく機能します。アゴニストを作用させることで、GPCRが活性化し、コンフォメーションが変化することでGタンパク質複合体の結合部位が露出します。これにより、Gαタンパク質はGDPを放出してGTPに結合できるようになります。
このアッセイに使用されるGTPは、放射性標識された非加水分解性のGTP類似体である35S-γ-GTP(GTPの末端(γ位)のリン酸基を35Sで標識)です。通常、GTPはGαタンパク質のGTPase活性(代謝分解)によってGDPに加水分解され、γ位のリン酸は除去放出されます。しかし35S-γ-GTPは非加水分解性であるため、細胞膜から35Sリン酸基が除去されることなく、35S-γ-GTPが結合したままの状態となり検出されます。ゆえにこの細胞膜に結合した35S-γ-GTPの量を測定することで、目的のGPCRの活性化を測定できます。
本アッセイが用いられる目的:
・目的のGPCRを活性化するリガンドのEC50とEmaxの決定。
・リガンドの性質の決定(アゴニストorアンタゴニスト)。
・アゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング。
GPCR活性化時のGTP結合。
非加水分解性35S-γ-GTP
この分子は、γ位のリン酸基に35Sが含まれています。γ位のリン酸基のこの位置にSが存在すると、加水分解されなくなります。下記に、製品一覧を記載します。
Product number | Radioactive concentration | Specific activity | Buffer |
NEG030H | 462.5 MBq/mL | 46.2TBq/mmol | 10 mM Tricine pH 7.6, 10 mM DTT |
NEG030X | 37 MBq/mL | 46.2TBq/mmol | 10 mM Tricine pH 7.6, 10 mM DTT |
35S GTP 結合アッセイは、以下の3つのフォーマットで行うことができます。
フォーマット | SPA | FlashPlateアッセイ | Filtrationアッセイ |
メリット |
・洗浄ステップ不要 ・96ウェル、384ウェルで実行可能。 ・1日以内で実験可能。 ・ばらつきが少ない |
・洗浄ステップ不要 ・ビーズが沈殿しないため、実験操作の自動化が可能。 ・96ウェルで実行可能。 ・1日以内で実験可能。 ・ばらつきが少ない。 |
・高い分離技術 ・大容量でも実験可能。 ・簡潔なアッセイステップ。 |
デメリット |
・バックグラウンドが問題になることがあり、アッセイの最適化が必要になる(細胞膜の量等) |
・バックグラウンドが問題になることがあり、アッセイの最適化が必要になる。 |
•洗浄手順があるため、アッセイのばらつきが大きくなる可能性がある。洗浄ステップや回数を最適化が必要になる。 •他のアッセイより多くの放射性廃棄物が発生する。 •ハイスループットでは実行できない。(96ウェルフォーマットは可能)。 |
詳細情報な情報はこちらから。
SPAでは、まずSPAビーズに細胞膜を結合させます。GPCRが活性化されると、35S-γ-GTPが細胞膜に結合し、これにより35SがSPAビーズに近接して配置されます。そして、35Sから放出されるβ線がSPAビーズのシンチレータと相互作用し、検出可能なシグナルを生成します。 細胞膜に結合していない35S-γ-GTPは、SPAビーズとの距離があるためシンチレータとは相互作用しません。
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FlashPlateは、シンチレータが埋め込まれた特殊なプラスチックプレートです。 FlashPlateアッセイでは、細胞膜をFlashPlateのウェルの底と側面に結合させます。GPCRが活性化されると、35S-γ-GTPが細胞膜に結合するので35SがFlashPlateの底と側面に接近します。35Sがウェルの端に近い場合、35Sから放出されるβ線がウェルに埋め込まれたシンチレータと相互作用し、シグナルを生成します。未結合の35S-γ-GTPは溶液中で浮遊し、シグナルを生成するほどウェル端には接近できません。
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本アッセイでは、まずアッセイプレート内で35S-γ-GTPを含む全ての結合反応を行います。次に、セルハーベスター(または真空マニホールド)を使用して、フィルター等を通して濾過します。その後、フィルターを洗浄し未結合の35S-γ-GTPを除去します。そして、フィルターを乾燥させシンチレーションカクテルを加えて適切な検出器で読み取ります。
詳細はこちらからご覧下さい。
・GTP結合アッセイのガイドはこちらをご参照下さい。
・Harrison, C. & Traynor, J.R. The 35S GTP-gamma-S binding assay: approaches and applications in pharmacology. Life Sciences 74, 489-508 (2003).
・35S-γ-GTP結合アッセイは、Gi共役型GPCRを用いる際に最も有効です。
・このアッセイでは、GDP濃度およびアッセイバッファー中の35S-γ-GTP とMg2+の濃度に影響されます。
・Filtrationアッセイを行う場合、フィルターは非特異的結合が増加するのでポリエチレンイミンで処理しないでください。