3.BASシステムに関するFAQs(Frequently Asked Questions)† アイソトープトレーサ研究用機器専門委員会委員長注記:本稿については、客観的な記述を心がけてもらうよう依頼したが、読者の便宜のため、商品の具体的な名称などは随所に入っている。宣伝を目的としたものでないことをお断りしておく。
このFAQsについては今後定期的に改訂を行うとともに,より専門的な続編も作りたいと考えている。 Questions一覧
Questions & Answers 1. IPの耐久性 Q11 IPの耐久性はどのくらいか
A11●BAS-III.BAS-III S lP 1) 放射線に対する露出,読取り,消去の使用サイクルに伴う輝尽蛍光体の特性変化はないと考えられ,1000回の繰り返し試験の結果でも変化は検知できなかった。 2) 同上使用サイクルに伴う機械的負荷による特性劣化は,BAS2000では1000回までの耐久試験では劣化を検知できなかった。5000回では端部3mm程度に損傷を認めたが実用可であった。
3) 常温常湿で保存された5年前のIPは初期特性との差を検知できなかった。 ●水分との接触の影響 BAS-III,BAS-IIISの両IPは乾燥が不十分な試料を露出するなどにより水分と接触すると, その接触部分は必ず感度低下と黄変を起こす。 水分との接触による劣化に対してはほほ完全に対策が施こされたIPとしてはMPがある。 ●結論 BAS用IPは正しく使われれば,少なくとも1000回の使用5年の期間にわたって特性変化がない。実用耐久性は,この数倍は十分あると推定される1)。
Q12 黄変 A12●黄変が起きるIP BAS用IPでは黄変はBAS-III,BAS-III S,BAS-TR, BAS-UR, TR2040,TR2040Sに見られる現象である。 MP系,SR系では起きない。 ●黄変の経過1) BAS-IIIは水に触れると感度の低下が始まり,2週間後には目視で黄変がわかるようになる。その後も感度低下は徐々に進み,6か月後には他の部分に比較して感度は1/3以下になる。これを元に戻す手段はない。 ●黄変が起きたら1) IP使用の作業手順をチェックする。IP表面に水分が接触しないように試料の乾燥を完全にしラッピングを完全にする。その後で新しいIPを使う。 実験の都合上,とうしても若干の水分が残った試料を使う場合はMPを使う。 MPはSDS PAGEで使う酢酸水溶液にも十分な耐久性がある。しかし,この場合もRI成分が合まれた水分にIP表面が接触しないように注意する。
Q13 TLCによる損傷 A13 ラップでTLCプレートを包んで使えば,一般にはIP表面は損傷しない。もし,ラップでTLCプレートを包んで使っても損傷がある場合は,プレートに溶剤が残っていて,それがラップ材を痛めていないか確認してみる。溶剤が残っていなくてラップ材が痛む場合はTLCプレートの種類を変えてみる。
2. 3H用IP Q21 汎用IPとの違い A21 ●目的・構造の違い2) BAS用の放射性同位元素(以下RI)の検出・定量のためのIPには3H用と一般用がある(その他のBAS用IPとして中性子用IPがある)。一般用IPは3H以外のすべてのRIを検出・定量できる。3H用IPは3Hも検出・定量することができる。この二つのIPの層の構成の違いは,3H用IPには保護層がないこと,輝尽性蛍光体層が一般用IPより薄いことである。 ●使用法の違い 3H用IPを用いて3H標識の試料の露出を行う場合は,試料をラップで包まず直接IPの検出面に密着露出する。これは.3Hのβ線はエネルギーが非常に弱いために、ラップを通過できないためである。3H用IPは,試料を直接IPに密着露出するために,一般に露出後は試料の放射能がIP表面に一部転写する場合がある。このため、1回目の使用によりlP表直に一部転写した放射能の影響で,再使用した場合には1回目の画像が残像のように薄く2度目の画像に重なって出てくるので,完全な意味では1回しか使えない。しかし,試料の配置の工夫や,予備実験と本実験での使い分け等の工夫により10-20回程度は再使用している例もあ る3,4)。 ●3H用IPは3H以外のRIに使えるか 3H用IPは3H以外のRIの検出・定量にも使える。3H以外のRIの検出・定量に使う場合,使い方は2通りある。一つは一般用IPを使う場合と同じように試料をラップで完全に包んで密着露出する方法である。この場合は一般用IPとほほ同じように繰り返し使用も可能である。もう一つは3Hラベルの試料の露出を行う場合と同様に,試料をラップで包まず直接IPの検出面に密着露出する方法である。この場合使用後の扱いは3Hラベルの試料の露出に用いた場合に準じる必要がある。このような使用方法で得られるメリットは試料表面と輝尽性蛍光体層(IPの層の構成のうちの放射線検出に直接寄与する層)が隙間なしに密着することによる画像の解像力向上効果である。解像力向上効果は試料・露出の条件によって大きく変わる。β線放出核種では14Cより32Pのようにエネルギーが大きいほど;β線放出核種より125Iのようなγ線放出核種の方が;試料厚みは薄いほど;また局所脳代謝率(LCGU)解析よりレセプター解析のように試料面内のRI局在性が高い試料ほど、この効果は大きい。
Q22 汎用IPに比べて高価か(価格に伴う効果・利点) A22 3H用IPは1回使用なのに高価すぎるという声が聞かれる。しかし,この価格以上の価値を発揮できる用途が確実に存在すると考えられる。高価であるか合理的な価格であるかを考えるいくつかの原因を以下に示す。 ●RI節約効果 3H用IPは高感度・高直線性であるため,実験に必要な3H標識体の量を大幅に低減でき,その標識体費用の低滅額が3H用IPの価格よりはるかに大きい例がある。 ●できないことができる効果 3H用IPを用いて4週間以上の露出をしてやっと画像化できるような低放射能の試料の検出および定量をすることがよくある。また10か月以上にわたり露出した例もある。こうした試料の画像化や定量は3H用IPなしでは不可能である。 ●時間節約効果 他の手段では検出・定量に2週間かかる実験が,3H用IPを用いると1日でできるような時間短縮の例が多々ある。1実験の結果を見て次の実験を計画するような場合には半年・1年という期間にわたった効果を考えると,3H用IPを用いる場合とそうでない場合では研究進度はまったく異なる。 ●フィルムとの比較 3H用IPは20cm X40cmサイズで,価格は25000円程度である。3H用フィルムは,一般に20cm X25cmサイズ10枚セットで.これとほほ同価格である。少量の実験をする場合にはフィルムを最小単位で購入するだけで3H用IPと同じ程度の価格になる。 余ったフィルムは多くの場合に有効に利用されないことが多いのが現実ではないだろうか。フィルムを使用する場合には,このほかに現像液・定着液が必要であり,少量の実験では現像液は使い捨てにせざるを得ない。こうして比較すると,フィルムを使用した場合との価格差は意外に小さい。 3H用フィルムは非常に乳剤層が弱くローラ搬送型の自動現像機(通常のレントゲンフィルム用自動現像機はほとんどすべてがこのタイプである)は使えないためにバット現像をすることになるが,手やピンセットの触れたフィルムの部分は必ず乳剤剥離が起こる。3H用IPには,こうした作業上のリスクを避けるメリットもある。 ●一般用IPとの価格比較 3H用IPの価格は一般用IPの半分以下である。
Q23 再利用できないか A23 ●なぜ,3H用IPは品質保証が1回きりなのか2) 3Hのβ線はエネルギーが非常に弱いので他の核種の場合のように試料をラッピングして使うことは困難である。このために試料をIPに直接接触させて露出する前提になっている。RIを含む試料と直接接触したIPの表面は,RIで汚染されている可能性があるからである。汚染があれば,次に使ったときの汚染の画像も一緒にデータとして記録される。 ●l回でも使った3H用IPは露出に使っていない部分も含めて再使用困難なのか 試料と接触していない部分の再使用は十分可能である。筆者は小さい試料を露出するたびにIP表面にフェルトペンで印を付けて区別している。再使用する場合は当然消去が必妻となるが,こうした取扱時にIPは汚染されている可能性のあるものとして扱う必要がある。消去機等を汚染しないために,使用済みIPをラップで包んで消去する必要がある。 ●使用による汚染は必ず起こるか 経験的には,試料ゲルの場合は汚染は起きないか非常に軽微であるが,生体試料の切片の場合は確実に汚染が起きると言える。3Hを含む生体切片の場合は,同じ露出時間で1回目の露出時の1/10の面像強度で前回試料の像が出ることもある。 ●使用済み3H用IPの再使用可否のチェック手順
RIを含む試料と直接接触した3H用IPを再使用しようとする場合には,それが可能かどうかの確認が必要である。
次にラップを取り外し,使用する実験の場合と同じ読取り機の条件で読取りを行う。読み出された画像に,前回までの使用時の画像がまったく出ていないか,次の実験の目的に対して許容できる程度であれば,RI汚染による画像の影響については使用可と判断してよい。 なお,「RI汚染の影響」と「IPの特性劣化の影響」の確認のための二つの実験は3H用IPの消去後の放置期間を適当に選ぶ(つまり長い方の期間を選ぶ)ことにより1回で済ますことは可能である。 ●薄い膜で試料を覆う使用法で再使用できるか 3H用IPを一般用IPと同様に繰り返し使うために1μm厚のマイラー膜で試料を覆って露出することが報告されている3)。この場合は直接密着する場合に比べて,かなり長い露出時間が必要である4)。
3. BAS画像およびデータの特性 Q31 フレアー(画像強度の極端に強い部分の周りに生じるにじみ) A31 BAS画像は試料の非常に高い放射能部分の周りに薄い画像が出る場合がある(放射線の飛程によるものは除く)。フレアーの強度例は,BAS2000で10×15mmの均一強度画像に対して,短辺方向に1cm離れた付置で0.l%程度である。特にBAS 2000やBAS 2500で見られるように高放射能部分を中心にIPの短辺方向に簿い画像が伸びる現象をここではフレアー現象と呼ぶ。 ●フレアーはなぜ起きるか BASの読取りはIP表面をレーザービームが走査してそのときにIP上から出てくる輝尽蛍光という光を電気的に検出して画像データとしている。レーザービームがIPに当たるときに反射光が少し出る。この反射光か読取り機の内部で繰り返し反射をしてIPの別な部分に当たると,その部分から輝尽蛍光が出ることがある。このようにIP上のレーザービームが本来走査している場所以外から出た輝尽蛍光が直接あるいは間接的に検出部に入ると,その輝尽蛍光はレーザービームが本来走査している場所からの輝尽蛍光として画像データに加算される。 レーザービームが本来走査しているIP上の場所か輝尽蛍光をほんの少ししか出さない場合(つまりオートラジオグラフィでは試料の放射能の低い場所)に,その近くに高い放射能にさらされた場所がある場合に,内部反射によって迷走したレーザービームが届いて輝尽蛍光が出ると,この輝尽蛍光はIP上の輝尽蛍光がほんの少ししか出ない場所からの発光として検知され画像データとして記録される,これがフレアー現象である。 ●2種類の光学的構成のBASによるフレアーの違い BASのレーザーの走査と輝尽蛍光の検出の光学的な構成には現在集光ガイド方式と共焦点方式の2種類がある。集光ガイド方式のBAS 2000,BAS1000, BAS1500, BAS2500, BAS1800ではレーザービームが走査するのは1画素ごとの点であるが,輝尽蛍光を検出するのに集光ガイドと呼ぶ光学部品を用いレーザービームの走査点を含むIPの短辺方向全域にわたる有限の幅を持つ線状の領域を対象にしている。このためにIPの短辺方向の線上に試料の放射能の高い場所があると迷走したレーザービームによるその場所からの輝尽蛍光はそのまま集光ガイドに検出される。共焦点方式のBAS 3000, BAS 5000ではレーザービームはレンズ系を通って1画素ごとの点を走査し,輝尽蛍光の検出路はレーザービームの入射経路と同じレンズ系を使いIP上のレーザービームが当たっている場所からの発光のみを対象にしている。したがって,IP上のレーザービームが本来走査している場所以外から仮に輝尽蛍光が出たとしても,直接は検出部に入ることがない。このために共焦点方式のBAS3000,BAS5000ではフレアーはほとんど問題にならない。
●フレアーの影響を避けるには ●フレアーをソフトウェアで除去できるか
フレアーは機器によって特性が異なるが,規則性・再現性がある。その意味でソフト的に除去できる可能性がある。しかし現実には二つの理由から実現は困難である。まずソフト演算をするには画像の非常に強度の強い部分の正確な強度値が必要であるが,フレアーを除去したい多くの場合この部分は飽和していて正確な強度値がわからない。 Q32 フェーディング(露出終了後読出しまでの時間の経過に伴う輝尽性蛍光量の低下) A32 ●フェーディング現象とは 露出終了後の読出しまでの時間が長くなるほど,得られる検出値は露出が終了したIPをその直後に読み出した場合に比べて小さくなる。この現象をフェーディングと呼んでいる。 ●フェーディング現象はなぜ起きるのか 放射線源等に露出されたIPの中では電子が励起され準安定状態に保持されているが,本来読取り過程での赤色光の照射を受けて青い輝尽蛍光を出し,これが検出されることになるが,この過程によらずに熱的な効果によって一部の準安定状態の電子がエネルギーを失うことによりフェーディングが起きると考えられる。 ●フェーディング現象の特質
通常のオートラジオグラフィで用いられる条件(室温での1時間以上の露出)では使用RIによらずに時間に対して一定の特性で検出値が低下する。 ●フェーディング現象を考慮した使用上の注意
BASシステムの蛍光量(検出値)には露出時間に対する直線性はないことに注意が必要である(ただし,冷却機をつけた冷蔵シールドボックスを使って露出時間に対して直線性を得ている例もある)5)。 露出と読取りを別の場所で行い,かつ別の機会の実験結果同士を比べるには露出時間のみならず露出終了から読取りまでの時間も管理する等の工夫が必要である。10分以下の短い露出時間の場合は温度によりフェーディング量が異なるのでデータを安定化するためには消去機の中で温度が室温より高くなったIPを数分間カセッテに入れて室温に馴染ませてから露出を開始する方がよい。 ●フェーディング現象のないlPが開発されてくるか フェーディング現象の物性論的な詳紬な機構には若干の未解明点も残っていることもあり,短期間(2-3年)にフェーディング現象のないIPが開発される可能性は小さい。現時点ではこの現象の影響を避けるか必要なら何らかの補正手段を用意して使うべきである。 Q33 時間直線性 A33 「フェーディング」の項で述べたようにBASシステムの検出値には露出時間に対する直線性はないことに注意が必要である。言い換えると14CのようにRIの減衰が無視できる試料でも,10時間露出した場合に1時間露出で得られた検出値の10倍の検出値は得られない(目安としては8倍ぐらいになる)。ただし,冷却機をつけた冷蔵シールドボックスを使って露出時間に対する直線性を得ている例もある5)。 Q34 デジタル特性 A34 BASシステムで読み取られた画像データは,デジタルデータである。デジタルデータであることに伴ういくつかの特性にも注意を払う必要がある。 ●上下限がある BASシステムの読取り条件によって決まる上限値と下限値がある。たとえばよく使われる条件の感度(S)10000ラチチュウド(L)4の場合にはPSL/mm2次元で表現すると上限は約4000,下限(0を除いた下限)は約0.4である。画素のうち上限値より強い部分は画像データとしては上限値と同じ値が記録される。画素のうち下限値より弱い部分は画像データとしては0として記録される。このために,読取り条件の設定が不適切であると,読み取られた画像が影も形もなく0となってしまうことがある。たとえは感度(S)10000でも,ラチチュウド(L)2の場合にはPSL/mm2次元で表現すると上限は約400,下限(0を除いた下限)は約4.0である。ここでPSL/mmi2がl.0から3.0の範囲に分布するはずの露出済みのIPを(S)10 000, (L)2で読んだ場合はすべて画像データは0になり影も形も見えない。同じIPを(S)10 000, (L)4で読んでいれば適正な画像データが得られる。読取り条件の特性値の意味と,各条件設定によって決まる上下限値は文献2)に示されている。 ●量子化誤差がある
アナログ量を不連続なデジタル量に変換するときに生じる誤差を,量子化誤差という。BASシステムでは量子化誤差が画像強度値に対して一定の割合になるような量子化をしている。 この割合は読取り条件の設定がラチチュウド(L)4,階調数(gradation)256の場合は3.8%,つまりPSL/mm2=100のデータはPSL/mm2が本来l00から103.8に当たる画像強度であることを意味し,PSL/mm2=l.0のデータはPSL/mm2が本来1.0から1.038に当たる画像強度であることを意味する(BASの量子化の方法では値が小さい領域では量子化誤差も小さくなる)。BASでは階調数が大きいほど,ラチチュウドが小さいほど量子化誤差が小さくなる。BAS 2000では量子化誤差は最も小さい条件では値の約0.2%になる。 量子化誤差について注意が必要なのは画像のバックグラウンドノイズか大きい場合である。バックグラウンドノイズによる画像強度と,注目している試料からの放射線による画像強度の合計が検出される値(PSL/mm2)であるため,検出値に対するバックグラウンドの寄与が大きくなると試料からの放射線による画像強度(PSL/m m2-BG)に対する量子化誤差の割合が大きくなることである。 たとえぱBAS 2000でラチチュウド(L)4,階調数(gradation)1024で読み取られた画像データの場合,量子化誤差は0.9%である。ここで検出された値がPSL/mm2=100バックグラウンドノイズがPSL/mm2=90の場合を考えてみる(検出値に対してバックグラウンドの寄与が90%でも1 cm X l cmサイズの均一濃度の試料ならばBASでは十分直線性が確保されていることを確認している)。この場合量子化誤差は100の0.9%.すなわち0.9PSL/mm2であるが,これは試料からの放射線による画像強度(PSL/mm2-BG)は10PSL/mm2に対しては9%に当たる。 Q35 画質 A35 画質についての不満を聞くことがある。主に分解能が不足しているという内容が多いように思われる。これらについていくつかの注意点を整理しておく。
●分解能・解像力と画素サイズ ●分解能・解像力が不足した画像になる要因
BAS画像について「分解能が低い」「画像が粗い」「解像力が不十分」と言われることがある。BASシステムは個々の機器によって最小画素サイズが200μm X 200μmから25μm X 25μmまで異なる。どれをとってもそれぞれの機器の画素サイズによってきまる画像の最高分解能はX線フィルムのオートラジオグラフィの場合の最高分解能に及ばない。しかし,BAS画像について不満がでる場合のほとんどのケースは機器の性能が原因ではなく,試料からIPに届く放射線の二次元的分布が分解能を低く見せていることによっている。 試料中のRIの分布に応じた放射線量が各画素に対応するIPの各部分に届くには,RIの崩壊数が統計的に扱える量になっていることが必要である。
●画像が粗い場合にどうするか ●画素サイズを小さくした場合の注意 画像のざらつきの観点から言うと(画素サイズの小さい機器を使うのは綺麗な画像が必要な場合が多いであろうから自明であるが),画素サイズを小さくした場合はそれに応じて露出時間を長くする必要がある。延長の割合は画素の面積比の逆比を目安にする。 ●十分な露出時間をとっても画質が不十分な場合
<BAS 1000の場合>
<高精細度IPや3H用IPを使う> 4. 公称特性および機器のvalidation Q41 BAS(富士写真フイルム㈱製品について記す)に関する機器validation GLP運用のためのユーザーサポートの考え方 A41 BASを使った計測をGLPに準じた運用をするために必要となる「情報」「ツール」「ソフト」「保守サービス」の提供(商品としての販売)が現在検討されている。 Q42 均一性 A42 A41 参照。 Q43 解像力 A43 A41参照。 Q44 機器validationの方法 A44 A41参照。 5. BASデータの学術誌投稿 Q51 ピクトログラフィの画像はアクセプトされるか A51 一般論としては間題なくアクセプトされていると考えられる(個々の学術誌の編集委員会の方針によって決まる問題なのですべての学術誌についてアクセプトされるという保証を与えることはできないが)。ここではピクトログラフィの画像が掲載されている論文のうちから比較的古いものと最近のものを1例ずつ挙げる6), 7)。 Q52 PSLは何と説明すればよいか
A52 ●PSLという語の由来
●PSL値の量的定義 ●PSL値の実用上の意味
PSL値の実用上の意味は,以下のように整理される。 ●投稿論文でPSL値をどう表現するか 論文の構成によって当然表現も異なるはずであるが,量の比較やグラフの縦軸の表示等の場合にはdose(PSL)やIP responseと表現するか,一つの画像の中のデータの議論であるならばrelative activity (PSL)と表現するのも合理性があろう2)。 6. 新薬の認可申請試験 Q61 IP法の現在のステイタス A61 本連載の中でより適切な回答者による執筆が予定されている内容であるので,ここでは筆者としての回答は差し控えたい。 Q62 WBAデータをQTDデータに代えられるか A62 A61参照。 Q63 TLC/液シンデータとの関係 A63 A61参照。 7. 放射線管理との関連性ならびにネットワーク Q71 設置場所がRI管理区域であるため出入りが不便である
A71 3H lPを使わない場合はBAS2000はRI管理区域外にも設置できる設計となっている。 Q72 ネットワーク対応と銘打っていてもBAS2500, MacBAS 2台使用のような場合には実際的には対応しづらいが
A72 Macintosh 版 Image Gauge (旧名称MacBAS)でのネットワーク接続ではファイルの共有化だけが提供される。ピクトログラフィは複数のMacintoshで共有できない。 8. ソフトウエア関連 Q801 BAS用のアプリケーションソフトウェアにWindows版はあるか A801 Windows95対応版がある。 Q802 BAS用のアプリケーションソフトウェアはどのように進化しているのか A802 現時点の主なソフトウェアであるEWS(ワークステーション)用UNlXソフトとMAC(マッキントッシュ用)MACソフトについて発売時期・名称・主な改善点の一覧を以下に示す。対応する読取り機およびコンピュータハードの機種の拡張や小さい改良は省略した。また,同じソフトでも使用するコンピュータハードの機種の違いにより処理速度は異なる。 ●EWS(ワークステーション)用UNIXソフト 1989. 10 BAS 2000発売。ソフトはSunview版
1994. 7 BAStation ver1.0 操作性改善のための全面改訂ソフト 1994.11 BAStation ver1.1 旧ピクトロ・旧LBP対応化 1995. 12 BAStation verl.4 定量Result機能の操作性改善,操作マニュアル第2版 1996. 12 BAStation ver2.0 印刷機能改善 ピクトロ高速化,操作マニュアル第3版
1998. 6 BAStation ver2.1 NFS,NlSなど大規模ネットワークにも対応化 ●MAC(マッキントッシュ用)MACソフト 1993. 3 BASl000用ソフト MacBAS V1.0 1994. 12 MacBAS V2.0 プロファィル機能・領域自動作成等ROI作成機能改善 1995. 9 MacBAS V2.2 プロファイル,ROI作成機能改善,簡易分子量測定機能 1996. 8 MacBAS V0.4 検量線機能,微小領域定量対応 1996. 12 MacBAS V2.5 階調表示・分子量測定・検量線・ROI作成機能改善 1997. 9 Image Gauge V3.0 Screen Dump機能,階調表示機能改善 1998. 10 Image Gauge V3.1 タイタープレート定量機能,定量値表示桁数増 Q803 BAS2000 BAStationのピクトロブリント動作が遅いが A803 BAStationの古いバージョン(Ver1.0からVer1.5まで)はプリント処理に時間がかかったが,BAStation Ver2.0以降ではプリント処理時間が著しく改善された。またbas1でログインする初代の解析コンピュータ(Sunview版)からアップグレードで解折ソフトのみをBAStationに変更したワークステーションは,導入当時は最新のものであったが,コンピュータ全般が進歩した現在にいたっては陳腐化している。現在ではより高速なコンピュータの使用により動作を高速化できる。 EWS(ワークステーション)用各ソフトそれぞれでピクトロにプリントするのに要する概略時間を以下に示す。 Sunview版 約3分 BAStation ver1.0-Ver1.1 合計約10分 (プリント操作~砂時計終了 約4分 マウス応答が遅い時間 約3分 プリンティング時間 約3分 BAStation ver1.2-Ver1.5 合計約7分 (プリント操作~砂時計終了 約40秒 マウス応答が遅い時問 約3分 プリンティング時間 約3分 BAStation Ver2.0-Ver2.1 合計約3分 (プリント操作~砂時計終了 約10秒 マウス応答か遅い時間 約0分 プリンティング時間 約3分 Q804 Sunview版ソフトでは画像のトリミング,出力サイズ変更がほとんどできないが A804 BAS2000用には現在Sunviewソフトに代えて,BAStationが販売されている。 BAStationでは画像を任意のサイズに切り出し・回転・反転などかできる他,TlFFファイルによる画像出力機能を備えているので,外部のコンピュータでそれを利用することも可能である。また,BAS用にはMacintoshおよびWindows用のImage Gauge (旧商品名MacBAS)という解析ソフト商品もある。これらを搭載したコンピュータをネットワークで接続しSunview解析部から画像データを転送し,解折することも可能である。 Q805 文字書き込み能力が不足だが
A805 Sunview版ソフト,BAStationおよびImageGauge(旧商品名MacBAS)とも,画像データに対して文字入れが可能である。ImageGaugeにはPlCT画像ファイルを貼り込みプリントするという機能もある。これらの利用により,市販のソフトを使った文章やグラフとBAS画像を合成可能である。 Q806 100%サイズプリントのサイズが微妙にずれる A806 BAStation, MacBAS, Image Gaugeは.Size Adjustという機能があり,それで微調整ができる。 Q807 隣接した不定形のスポットの領域設定が困難であるが A807 BAStation Ver2.1から,「ROIの分割ツール」が追加された。隣接する複数の領域をまとめてROI定義し,それを後からマウスを使ってナイフで切り分けるように分割していくことが可能になった。これにより隣接した領域同士を1画素の隙間・重複なく完全に隣接した二つのROIとして設定できるようになった。 Q808 BASを使うようになって感度はよくなったが解析に時間がかかるようになった。 特に定量的WBA(全身オートラジオグラフィ)の場合,定量操作に時間がかかる。ROIの決定は客観的に行うのが難しく,特に時間がかかる。 A808 ●解析に時間かかかる BAS以前には検出できなくて見落されていた部分が画像として検出されるようになったこと,BASの確かな定量性や従来法にない種々の画像解析機能が提供されたことにより,結果として解析対象および解析項目が増加し時間がかかるようになったと考えられる。もちろん,同じ解析をより早く・より快適にできるようにソフトの改良は日々進んでいる。 ●WBA(全身オートラジオグラフィ)におけるROI作成について 現在はすべてのBAS用ソフトは,ROI作成は使う人が画面上でマウスポインタを用いて図形作成することを基本としており,臓器を自動的に識別して領域定義する機能はない。
ただ,ソフトの改良によりROI作成を早くかつ,客観性を向上できるようにいくつかの工夫がされている。ImageGauge(旧製品名MacBAS)およびBAStation Ver2.1にはマウスで指定した点と同じ画像強度の点を結んで閉領域を作成する「オートトレースツール」があり,臓器を効率よく囲むのを支援している。また、BAStation Ver2.1では,隣接した領域を簡単に作成できる「分割ツール」や,肝臓画像から血管部分を除去した部分のみの定量を容易にするためのResultの「Combination」機能が新設された。 Q809 BAS2000 Sunview版とMacintoshとの互換性 A809 ●Macintoshの市販のソフトウュアとのデータの融通性
Sunview版ソフトはMacintoshの市販のソフトウェアとデータの融通性は設計上考慮されていない(Sunview版が発売された1989年時点ではMacintoshパソコンではBAS画像のような大容量データを扱うことが困難であったから)。したがってBAS2000Sunview版からMacintoshパソコンと直接に画像データ他をやりとりすることはできない。
●富士写真フイルム㈱が販売している各BAS用ソフト間のデータ融通性 Q810 記憶メディアの磁気テープでsaveに著しく時間がかかる A810 MOドライブをオプションで付設可能である。 Q811BAS用ソフトおよびコンピュータの2000年間題は
A811 ●Sunview版ソフトおよびその解析部
●BAStationソフトおよびその解析部 ●Macintosh版ImageGauge(旧製品名MacBAS)ソフトおよびその解析部 正常な状態なら2040年まで使用可能である。ただし,2020年以降にOSの再インストールの必要が生じた場合(ハードディスクのクラッシュ等により)はOSの設計上年月の再設定ができない。 ●Windows版ImageGaugeソフトおよびその解析部 2038年まで使用可能である。OSの再インスト―ルに関してもこの範囲では間題ない。 9. その他,特殊なニーズ Q91 IPをカットして用いたいが切断面の処理について A91 IPをカットして使用する場合,切断面は蛍光体がむき出しになる。蛍光体は水分・湿気で劣化するため保護することが望ましいが,残念なから日用品でできる簡単な処理方法はない。しかし切断したIPをなるべく湿度の低い環境に置いておけば劣化はかなり抑えられる。水分を含む試料の使用は避け,使用時以外はデシケータ等に保存するのがよい(IPは水蒸気そのもので劣化するわけではなく,切断面のむき出しになった蛍光体層には水蒸気が入りやすく,その水蒸気が結露して水の状態になったとき蛍光体が劣化して感度が低下する)。 Q92 一部ユーザーが改造して使っているBASを自分の研究用に買いたいが A92 改造をされた人に相談されるのがよいと思われる。富士写真フィルム㈱が販売することはない。 Q93 Chemiluminescenceを用いたとき,RIを用いてBASで得られるのと同等の感度で検出可能な装置は開発されているか
A93 富士写真フィルム㈱では化学発光,蛍光の試薬に対応したイメーンングシステムも販売している。化学発光用の高感度高解像度冷却CCDカメラ方式の「ルミノ・イメージアナライザーLAS-l000」蛍光およびRI兼用システムの高感度スキャナ方式の「フルオロ・イメージアナライザーFLA2000」である。
このFAQs作成に当たっては富十写真フイ ルム㈱の金子孝史,袴田正志,蔦森康浩,梅田知昭,錬石恵子,五月女 惇,南 知行各位他の協力を得た。 最後に,この機会を与えていただいた栗原 紀夫先生他アイソトープトレーサ研究用機器専門委員会委員の各先生方に謝意を表します。
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