LSC (Liquid Scintillation Counter) の測定原理は?

 放射線と物質との相互作用の中で励起された原子や分子が基底状態に戻る際,特定の波長の光(蛍光:Scintillation)を放出します。このような物質を蛍光物質(シンチレータ:Scintillator)といいます。このシンチレータには無機または有機物質があり,特に後者をトルエンやキシレンのような有機溶媒に溶かし,図に示すようにβ線を放出する放射性核種を含む試料と混合溶解することによって効率よくβ線のエネルギーを蛍光に変換させ,さらに光電子増倍管(PMT)で電気信号に変換して放出されるβ粒子の数を測定できます。この時,サンプルバイアルを2本のPMTで測定する事により,PMTから発生するノイズと目的とするサンプルからの蛍光を区別する事が可能となり,バックグラウンド値を低減できます(同時計数)。特に,LSC法は表に示すような長短所を持ち,α線や低エネルギーβ線放出核種の測定に利用されていますが,試料の化学組成によってクエンチングを生じることがあります。また,近年,LSCによるチェレンコフ効果を用いた測定も行われています。
図  LSCの測定

 
表   液体シンチレーション計数法の特徴
長     所
短     所
1) 放射線の自己吸収がない。
2) 放射性原子の周囲はシンチレーター
 で囲まれており,放出された放射線
 のエネルギーが効率よく検出部分に
 吸収され,4π検出が可能である。
3) 試料中のβ粒子の放出率を計測する
 ことによって放射能強度が測定でき
 る。また,蛍光強度の分布から最大
 エネルギーを求め,試料中の放射性
 核種を決定できる。
1) 試料の化学的性質,共存物などに
 よってクエンチング(消光)現象が
 生じ,検出効率が低下する。
2) 試料によってはケミルミネッセンス
 が生じることがある。