研究者紹介 No.48

研究者紹介
更新日:2024年7月12日(所属・役職等は更新時)
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アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

はじめてアイソトープ・放射線を意識したのは、10代半ばです。高校生の頃に炭素14年代測定法を知り、遺跡の木造建築物や遺物の年代がわかることを知り、感動しました。国立科学博物館の高校生向けのラボ実験で楽しく遊び(学び)、自然を観察して遊んでいました。大学では、放射化学研究室に所属し、環境水中のRa同位体の基礎研究に従事し、環境放射能研究を始めました。関連学会・研究会で様々な研究者の様々な環境放射能・地下水の発表を聞けることも大学院時代の楽しみでした。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

博士課程に進学・研究職へ進むことに対して何もためらいはありませんでした。学生時代の恩師(佐藤純先生)の娘さんは、恐竜研究の若手研究者として活躍をしており、恩師は女性が研究を行うことを否定しない方でした。学位取得後に在職した京都大学の研究室教授(馬原保典先生)や他研究室の先生方(藤井紀子先生等)とも楽しい時間を過ごさせていただき、若手時代も恵まれており幸せでした。この道にすすんで何も後悔はないです。

現在の研究について

現在の研究内容、おすすめポイントを教えてください

現在の研究は、大別すると、1) fallout核種のfate(未来予測)に関する研究と2) 放射性廃棄物処分・水資源保全のための地下水年代測定の高度化に関する研究を行っています。 いずれも、フィールドスタディーであり、地下水・森林フィールドを中心にフィールドワークを行い、得られた試料(地下水、樹木など)中の核種・化学分析を行う実験系です。ケミカルセパレーションの感覚も試料一つ一つわずかに違いますので、フィールドだけではなく実験室内でも自然(地球)に向きあえる喜びもあります。

研究を行う上で大事にしていること(モットー)を教えてください

なぜ自分はこの研究を行うのか、日々、自身に問うこと、研究・技術は世の中へ還元するものとの意識を持ち続けること、自身の研究と未来社会とのつながりを考えることです。最後まで納得できる結果を得られるまでたとえ10年、15年かかろうが、強い信念を持ち努力し続ければ、得られるものがあります。冬季も雪の中で学生と一緒に地下水サンプルや雪を採取しておりますが、そのときのサンプルはそのときしか取れないため貴重です。さらにフィールドからラボ内の分析、共同研究者・学生等との実験・論文・日常のやり取りも私の大切な宝物です。

あなたの研究人生において、影響を与えた方を教えてください

学生時代の恩師の佐藤純先生と若手研究者時代に出会った馬原保典先生です。佐藤先生は山の中腹で私が上がってくるのを辛抱強く待ってくださっていた方、馬原先生は共に全力疾走で走ってくれた方(現在も共同研究者)、そのようなイメージです。お二人とも研究および人生で大切なことを教えてくれた方です。

学生へメッセージ

アイソトープ放射線および様々な分野でも、実験系のフィールド研究者は少なくなっております。シミュレーションは様々な回答が得られますが、実験で得られるフィールドデータ(実測)は真実です。体力勝負のフィールド分野ではありますが、最後まで納得できる結果を得られるまで、強い信念を持ち努力し続ければ、必ず道が開けます。


太田 朋子(おおた ともこ)
専門
環境放射能、水文学
略歴
2006年 明治大学大学院にて博士(工学)取得、同年京都大学 原子炉実験所・助手(助教)、2016年 一般財団法人 電力中央研究所・主任研究員などを経て、2020年7月より現職に至る