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同位体に関する研究では、分野が多岐にわたり、研究に必要となるため、実験装置を準備するところから手を動かす必要があります。私は、幼少期から手先が器用で工作が得意だったため、実験装置を一から作ることができるという点にひかれて、同位体分析に関する研究室に進学しました。研究室で初めて作ったのは、分析用レーザーの周波数安定化に用いる検出器でしたが、研究室の先輩方も私の作製した装置を使ってデータを取得するなど、役に立っていたような記憶があります。最終的に、レーザー冷却を用いた同位体の検出が可能な装置の基礎部分を博士課程修了時までに作製することができました。現在は、さらに発展した分析装置が研究室で開発され、同位体分析に応用されています。
日本学術振興会の特別研究員時代を含めると10年以上研究を生業としておりますが、特段不安等はありません。博士を取得するということは、予算さえ確保できれば研究を一から始めることができる免許のようなものであると、学生時代に言われていましたので、それが可能かどうか身をもって経験するために、研究職につきました。
学部生の頃は体力があまりなかったので、講義の合間に学内のトレーニング施設に通い、筋トレや水泳などで肉体改造を行いました。その後、たまたま学内で"あのアーネスト・ホーストがやっていた格闘技サバット"というスポーツ講座があったので、興味本位で参加したところはまってしまったのが、フランス式のキックボクシングのサバットという競技です。学生時代に日本代表になり、現在も継続中です。世界大会にも在学中から参加し、5位入賞が最高成績ですが、アジア王者およびアジア-太平洋王者のタイトルを現在保有し、世界ランク6位となっています。学生時代もそうですが、現在も研究と競技を両立させてやりくりしています。
現在は、同位体・放射線には直接関係ありませんが、材料試験データに基づいた数理モデルの開発を行っています。今はやりでいうところの機械学習を用いたモデリングも含まれます。モデルの開発のために取り扱うデータは、ミクロスケール(原子レベル)のものからマクロスケール(シャルピー試験や破壊靭性試験など)のものが含まれます。スケールの異なる現象を俯瞰的にモデリングするために、同位体を取り扱う研究をしていた時の経験が非常に役立っているかと思います。注意すべきところはとことん注意しつつ、合理的な判断でモデルを作るところなどは、実験装置の開発と類似している気がします。
微量で放射性同位体であるCa-41です。私の学位論文で開発した分析装置はCa-41を最終的に分析することを目的としていました。そのため、Ca-41は最も縁がある放射性同位体です。
同位体の研究は、同位体が関与する現象がとらえ方によって、全く違うものに見えてくるところに面白さがあるかと思います。質量数が1つ違うだけでも、思いもよらない新しい現象を発見することが可能である分野だと思いますので、失敗を恐れずチャレンジすることができる人には非常に向いていると思います。