研究者紹介 No.11

研究者紹介
更新日:2020年3月31日(所属・役職は更新時)
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アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

私が,放射線を用いた研究を始めるきっかけとなったのは,大学3年生の時に友人の誘いで参加した高エネルギー加速器研究機構主催のサマーチャレンジでした。このプログラムでは,様々な大学の学生が約2週間,同研究所で寝食を共にしながら最先端の物理学の講義を受講し,放射線物理などの研究活動を行うというというものでした。そのプログラム中,全長数キロメートルにも及ぶ電子加速器を初めて見たときに,非常に衝撃を受け,「この装置をもっと詳しく知りたい」と思ったのが放射線の研究開始のきっかけです。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

私が,研究職を志したのは,大学院修士一年生の時でした。同期の多くは就職活動を開始する中,私は博士後期課程への進学を決断しました。このころ,日々の研究活動が本当に楽しくて,将来のことなどあまり真剣には考えていませんでした。実際,自分の将来がどうなるかなんてわからないので,自分が「今」,楽しいと思えることに全力で頑張って,その積み重ねで未来が切り開けると思っていたので,一日一日を大切に過ごしていました。

現在の研究について

現在の研究内容、おすすめポイントを教えてください

私は,主に人工的に放射線を発生させる放射線発生装置の研究開発を行っています。放射線の中でも,電子線といって電気の担い手と同じ「電子」の集団で構成される放射線の「生成」と「高エネルギー化」のための装置開発を行っています。電子線は,非常に制御性に優れた放射線で,例えば,ナノメートル(nm)サイズの表面構造の観察やnmスケールの表面加工を施すことが可能です。また,電子線は高エネルギー化することでX線や陽電子,中性子等といった様々な最先端計測に利用される放射線を二次的に生成することも可能です。このように応用の幅が非常に広い電子線を,効率良く生成・高エネルギー化することで,既存装置の高性能化と新たな電子線の利用価値の創造に向けて研究開発に取り組んでいます。

研究を行う上で大事にしていること(モットー)を教えてください

私が研究を行う上で大事にしていることは,「自分を信じて忍耐強く研究に取り組む」ことです。研究は新しいことへのチャレンジの連続なので,うまくいかないことの方がたくさんあります。例えば,私の場合,要求仕様を満たす材料の開発に約2年間を要した経験があります。開発まで長期間を要しましたが,その間は,自分の考えを信じ,次々と直面する問題に一つ一つ地道に解決していくことで最終的には大きな成果を上げることができました。そのため,私は常に自分の考えを信じることを大切にしています。

研究の息抜きにしていることを教えてください

学生時代から体を動かしたり,スポーツしたりするのが好きで,今は週に2~3日ジムで筋トレするのが研究の息抜きになっています。研究は,意外とメンタルと体力が必要です。私の場合は,何も考えずに全力で運動して汗をかくことでストレスが解消され,それと同時に基礎体力も向上し,最高の息抜きとなっています。

学生へメッセージ

アイソトープや放射線を使った研究をしている(したいと考えている)学生へ一言お願いします

アイソトープや放射線は,一般社会においては,その危険な一面が取り上げられることが多いですが,人類は,この約100年間でこれらに対して非常に深い知識を獲得し,有効に活用するに至っています。例えば,放射線を用いて体内の診断や悪性腫瘍の治療などは,我々の身近なところで放射線が利用されています。その他にも,放射線による非破壊検査やナノ顕微・加工技術,滅菌技術など,私たちの日常生活には直接目に触れることは少ないですが,我々の生活基盤を支える重要な要素技術が数多く存在しています。これから放射線・アイソトープを用いた研究を志す皆様は,これらの正しい知識を身に着け,最先端研究を共に発展させていきましょう。


佐藤 大輔(さとう だいすけ)
専門
加速器物理,加速器工学,電子加速器,電子源
略歴
2016年東京工業大学理工学研究科原子核工学専攻修了 博士(工学),2016年高エネルギー加速器研究機構加速器研究施設 博士研究員を経て,2018年より現職。2019年より,産業技術総合研究所 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ(兼任)