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実験目的・原理
主な準備物
実験操作
データ処理ほか追記
考察への手引き
細胞が増殖するためには、DNA の合成が必要である。その量的な増加は、分裂によって増加する細胞の増殖を反映するパラメータの一つである。適当な増殖因子、サイトカインやホルモン等を共存させることによって、それらの物質が細胞の増殖に及ぼす影響を定量的に評価することができる。本実習ではDNA の原料であるチミジンを標識した[methyl-3H] thymidine の取り込みを指標として、NHLF におけるDNA 合成能を測定する方法について述べる。
マイクロピペットおよびチップ(各種)、アスピレーター、ディスポーザブルピペット(各種)、電動ピペッター、連続分注器およびコンビチップ、細胞培養用フラスコ(75cm2)、50mlおよび15ml 遠心チューブ、96well 平底プレート、バイアル瓶、遠心分離機、液体シンチレーションカウンター、CO2 インキュベーター、プレートシェーカー、恒温槽
・DMEM 培地(非働化したFBS10%含有)
・trypsin-EDTA 液
・PBS(-)
・クリアゾルⅠ(またはクリアゾルⅡ)
・[methyl-3H]thymidine 溶液(レビティNET-027E)
・トリクロロ酢酸(TCA)
・水酸化ナトリウム
・塩酸
・メタノール
・TGFβ1
・angiotensine Ⅱ
・アルドステロンなど適当な増殖刺激物質
(1)NHLF をフラスコ(75cm2)に培養する。培養法については成書を参照のこと。実験に使用する細胞は6~8 継代程度が適当。
(2)上記フラスコ内の培地を廃棄する。
(3)10ml のPBS(-)をフラスコに添加し、細胞表面を洗浄する。(2 回)
(4)37℃設定の恒温槽内で加温したtripsin-EDTA 液5ml をフラスコに添加。
(5)3 分程度静置した後、フラスコを軽く叩き、細胞を剥離する。
(6)フラスコに培地10ml を添加して細胞を懸濁し、50ml 遠心チューブに回収する。
(7)フラスコを培地10ml で洗浄して、上記50ml 遠心チューブに回収する。
(8)220g,25℃で5 分間遠心分離する。
(9)上清を除去し、ペレットを培地4ml で再懸濁する。
(10)細胞数を計測し、培地を加えて1.25×105cells/ml の細胞懸濁液を調整する。
(11)96 穴平底プレートに上記細胞懸濁液を80μl/well で播種する(1×104cells/well)。
(12)37℃、CO2 濃度5%のインキュベーター内で24 時間培養する。
(1)24 時間培養したプレートに、増殖刺激物質を溶解した培地を20μl/well 添加し、プレートシェーカーで混和後、37℃、CO2 濃度5%のインキュベーター内で24 時間培養する。無刺激群は培地のみ20μl/well 添加する。( 添加物の最終濃度の例...TGFβ1:5ng/ml、angiotensineⅡ:10-6M、アルドステロン:10-7M)
(2)増殖刺激物質または培地を添加した21 時間後(細胞回収の3 時間前)に、培地に3.7kBq/μl に調整した[methyl-3H]thymidine を10μl/well 添加する。(37kBq/well)
(3)増殖刺激物質または培地を添加した24 時間後、プレート内の培地を廃棄し、PBS(-)で数回洗浄する。
(4)メタノールを150μl/well 添加して5 分静置。(2 回)
(5)メタノールを除去して蒸留水でリンスした後、5%TCA を10μl/well 添加して10 分静置。再度、5%TCA を10μl/well 添加して10 分静置。
(6)0.3N 水酸化ナトリウム溶液を150μl/well 添加し、それぞれ全量をバイアルに移す。
(7)バイアルごとに4.5N 塩酸を10μl、クリアゾルを3ml 添加し、液体シンチレーションカウンターで計測する。
(1)無刺激群のカウントを100%として、増殖刺激(阻害)物質によるカウントを比較する。
(2)測定値は複数のwell の値を平均して求める。3 well を一組とした場合,1 プレートで無刺激群のほかに最大31 群の刺激物質の種類や濃度を比較することができる。
(3)3H の下限数量が1GBq であることから、(使用核種が1 種類で,ほかに使用しない場合)1 回の実験でプレート280 枚までスケールを拡大することが可能。多数のプレートを処理する場合は、マルチチャンネルピペット、グラスフィルタープレート、セルハーベスター、送風定温乾燥機、(液体シンチレーションカウンターの代わりに)マイクロプレートシンチレーションルミネッセンスカウンター(Top count あるいはマイクロβⅡ等)といった機器を用いると効率的である。
(4)その場合、[methyl-3H]thymidine 取り込み終了後、プレート内の培地を廃棄し、PBS(-)で洗浄、trypsin-EDTA で細胞を剥離して、セルハーベスターを用いてグラスフィルタープレートに回収する。
(5)グラスフィルタープレートに蒸留水を通してフリーの[methyl-3H]thymidine を除去し、送風定温乾燥機で乾燥。専用のシンチレータを添加した後、マイクロプレートシンチレーションルミネッセンスカウンターを用いて計測する。
(1)測定値に影響する因子には,事例以外どのようなものがあるかを調査する。
(2)種々の薬品の毒性や増殖増強作用について評価する実験例をデザインする。